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▼ 変更履歴

Texas Instruments BA II Plus

BA II Plus 正面画像 メーカーTexas Instruments
型名BA II Plus
種別金融電卓
発売開始1991年(初代)。ただし、筆者が入手したのは2014年版。
製造終了-
寸法 ※公表値は未発表のようです。
奥行 153mm × 幅 76mm × 厚さ 約14.5mm(実測値)
奥行 165mm × 幅 76mm × 厚さ 約17.5mm(保護カバー背面装着時の実測値)
重量 ※公表値は未発表のようです。
81 g(電池を含む実測値)
111 g(電池と保護カバーを含む実測値)
入力方式 標準方式。ただし、2種類の方式がある。
・チェイン方式:初期設定。一般電卓と同様に演算子の優先度を考慮しない。
・AOS方式   :演算子の優先度を反映した計算が可能。
画面白黒液晶:ドットマトリクス3文字+等号+負号+7セグメント10桁+状態インジケーター13個
CPUTOSHIBA T6A53 ?
RAM不明
ROM/Flash不明
電源CR2032 × 1
プログラミング言語なし
公式ページ BA II Plus financial calculator
説明書URL BA II PLUS Guidebook
著者の購入年2018年1月25日
著者の購入価格(購入店)4,200円(税込)(Amazon Japan マーケットプレイス)

概要

テキサス・インスツルメンツ社の代表的な金融電卓であり、HP 12c シリーズへの対抗機種です。
CFA協会認定証券アナリスト試験持ち込み可能機種の1つです(2018年2月11日現在)。

旧態依然とした操作性の HP 12c シリーズよりも操作性が大幅に進歩しています。
英語版Wikipedia(12:44, 23 January 2018 UTC)によると、中年以上の人は HP 12c シリーズを好み、それより若い世代は本機 BA II Plus シリーズを好むそうです。そのため、売上も上がり続けているようです。

初代 BA II Plus は1991年に発売され、2代目以降は1995年、2000年、2004年、2014年に発売されています。
バージョンが変更される度に外観が変更されてきたのですが、機能・操作方法の仕様はほとんど変化していないようです。

本機の上位機種に BA II Plus Professional が存在します。

目次

  1. レビュー
    1. ワークシート
    2. 操作性
    3. 金融計算の例
      1. 単利計算
      2. 複利計算・償却計算
      3. キャッシュフロー計算
    4. 関数電卓的機能
    5. 機械的な作りは安っぽい
    6. 誤植の多い説明書
    7. 総評

レビュー

このレビューは2014年版の BA II Plus に基いています。
説明書は "BA II PLUS Guidebook"(著作権表示が2005年)を使用しました(2018年2月11日現在の最新版)。

注意:
電卓付属の黒い外装の小冊子は説明書ではありません。基本操作と変数の一覧表のようなものです。
この冊子のPDFファイルはダウンロードできません(2018年2月11日現在)。
小冊子 小冊子の中身

ワークシート

本機 BA II Plus は各機能をワークシートと言う単位で分割しています。
1つのワークシート = 1つの機能 + そのワークシート専用の変数群
です。

ワークシート名メニュー表示操作説明
TVM Worksheet [2ND][P/Y], [2ND][BGN] TVM(Time Value of Money : 貨幣の時間的価値)計算
Amotization Worksheet [2ND][AMORT] 償却スケジュール計算
Cash Flow Worksheet [CF], [NPV], [IRR] キャッシュフロー計算(NPVとIRR)
Bond Worksheet [2ND][BOND] 債券計算(債券価格、満期・コール時の利益、経過利息)
Depreciation Worksheet [2ND][DEPR] 減価償却スケジュール計算
Statistics Worksheet [2ND][DATA], [2ND][STAT] 統計計算。4種類の回帰分析あり。
Percent Change /
Compound Interest Worksheet
[2ND][⊿%] 増減率 / 複利計算(支払いがない複利のみ)。
2つ機能があるように見えるが、1回だけの複利計算を増減率計算に流用しているだけ。
Interest Conversion Worksheet [2ND][ICONV] 名目金利と実効金利の変換
Date Worksheet [2ND][DATE] 日付計算
Profit Margin Worksheet [2ND][PROFIT] 粗利率計算
Breakeven Worksheet [2ND][BRKEVN] 損益分岐点の計算
Memory Worksheet [2ND][MEM] 10個のメモリー操作

各ワークシートの変数群は、完全に独立しています。
複数のワークシートに同名の変数があってもお互いに独立した別変数になっています。
そのため、HP 12c シリーズのように複数のレジスタが同じ記憶領域を共用している問題はありません。

全ワークシートの変数(variables)を合計すると、244個ありました。
しかし、説明書では定数(設定の選択肢)としか思えないものも変数扱いされていますので、実際に変数として機能するものはもう少し少ないのです。それでも200個を越える変数が使えます。
このように変数が多いので、1つの変数が複数の役割を持つことは少なくなっています。

これらの変数は電源を切っても維持されます。
ただし、電池交換時や電池が切れた時は全ての変数の内容が消えてしまいます。

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操作性

1行表示だが、メニュー操作になっている

本機の表示装置は、1行しか表示できません。
しかし、アルファベット3文字が表示できることと、[↑][↓]キーによって、メニュー操作が可能になっています。

説明書(2005年版)は "Menu"(メニュー)という言葉を使っていません。
しかし、説明しやすいので、「メニュー」という言葉を使います。

例えば、Depreciation Worksheet(減価償却計算)のメニューを表示してみましょう。
入力された数値は説明書の例に基づいています。

操作表示意味種別
[2ND][DEPR]DEPR SL 定額法(他の計算方法に変更可能)
Straight-line method
設定変数
[↓]DEPR LIF 資産の耐用年数
Life of the asset in years
入力専用変数
[↓]DEPR M01 開始月(3月中央)
Starting month
入力専用変数
[↓]DEPR CST 資産の取得原価
Cost of the asset
入力専用変数
[↓]DEPR SAL 資産の廃棄価格
Salvage value of the asset
入力専用変数
[↓]DEPR YR YR年目を計算する
Year to compute
入力専用変数
[↓]DEPR DEP YR年目の償却費用
Depreciation for the year
自動計算変数
[↓]DEPR RBV YR年目の年末残存簿価
Remaining book value at the end of the year
自動計算変数
[↓]DEPR RDV YR年目の残存償却可能価額
Remaining depreciable value
自動計算変数

表示が1行しかないので、[↓]キーの連打が必要ですが、変数のメニューになっていることが分かります。
表示した変数が選択した変数ということになり、その変数に対する操作ができます。

メニューは[2ND][QUIT]で抜けることができます。

ところで、上の例では、減価償却の計算方法が定額法になっています。
他の計算方法である年代総和法(級数法)、定率法、定率法から定額法に切替、フランス式定額法、フランス式定率法が選択可能です(フランス式〜は表示設定をヨーロッパ方式にした場合のみ使用可能)。
SLが表示されているときに[2ND][SET]を押して切替えます。

状態インジケーターが操作を案内する

メニューで選択した変数に対してどのような操作が可能なのかは、液晶の上部にある以下の状態インジケーターが教えてくれます。

状態インジケーター意味
COMPUTE [CPT]キーを押して計算可能
ENTER 数値キーで値を入力可能
SET [2ND][SET]操作で設定変更可能
UPDOWN 上下キーでメニュー内部を移動可能
DEL キャッシュフローデータや統計データの削除可能
INS キャッシュフローデータや統計データの挿入可能

このように状態インジケーターが可能な操作を案内するので、操作が分かりやすくなっています。

変数 N, I/Y, PV, PMT, FV は例外的にメニューに入っていない

TVM Worksheet の変数 N, I/Y, PV, PMT, FV は例外的にメニューに入っていません。

変数名意味
N 支払い回数
I/Y 年利(Interest per Year)
PV 現在価値(Present Value)
PMT 1回毎の支払額(Payment)
FV 将来価値(Future Value)

これらの変数は使用頻度が高いので、専用キーで操作することになっています。
つまり、[N] [I/Y] [PV] [PMT] [FV] のことです。
これらのキーは HP 12c シリーズの [n] [i] [PV] [PMT] [FV] と似ています。

BA II Plus : TVM keys HP 12c Platinum : Financial keys
BA II Plus HP 12c Platinum

数値を入力してから [N] [I/Y] [PV] [PMT] [FV] のどれかを押下すると数値の設定。
[RCL]を押してから [N] [I/Y] [PV] [PMT] [FV] のどれかを押下すると数値の呼出。
ここまでは BA II Plus も HP 12c シリーズも一緒です。

しかし、BA II Plus と HP 12c シリーズでは、計算の開始方法が異なります。
HP 12c シリーズの場合、HP 12c Platinum のレビューの複利計算で書いたように計算開始できる状態が限定されていました。
「金融レジスタに設定した数値が表示されている状態」あるいは「複利計算の結果が表示されている状態」でのみ [n] [i] [PV] [PMT] [FV] のどれかを押下すると計算が始まります。
HP 12c シリーズはこのような方法なので、計算開始できる状態が分かり難く、その状態を意図的に作り出さないといけないこともあります。

BA II Plus はその問題を[CPT]キーで解決しています。
[CPT]キーを押下してから [N] [I/Y] [PV] [PMT] [FV] のどれかを押下すると計算が始まります。
非常に明解な方法です。

日付入力は独特

Bond Worksheet と Date Worksheet にて日付入力が必要です。
しかし、変わった日付入力をします。

例えば、「2018年1月23日」を入力するとき、以下のようになります。

日付の書式設定入力
US(合衆国方式) 1.2318
Eur(ヨーロッパ方式) 23.0118

どちらの書式でも西暦の下2桁しか入力しないのです(この場合、18)。
これは BA II Plus が扱える年月日の範囲を1950年1月1日から2049年12月31日に限定しているから可能なのです。
つまり、西暦の下2桁が50~99のときは1900年代になり、下2桁が00~49のときは2000年代になるのです。
このおかげで入力は多少速くなるのでしょうけど、扱える年月日の範囲は狭くなっています。

ちなみに HP 12c シリーズは1582年10月15日(グレゴリオ暦の開始日)から4046年11月25日と幅広い年月日を扱います。

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金融計算の例

本機 BA II Plus の金融計算機能はワークシートの項目で書いたように多岐に渡ります。
そのため、ここでは単利計算、複利計算・償却計算、そしてキャッシュフロー計算の例を紹介します。

できるだけ HP 12c Platinum の金融計算の例に合わせることとします。
小数点以下の桁数表示は2桁とします(工場出荷時設定)。

計算例において、答えを出している行の背景を薄い赤色にしています。
負数の数値は支払い額を表しています。

(注意)計算例は現実的ではないかもしれません。あくまでも操作例だと思って下さい。

単利計算

本機 BA II Plus には単利計算の機能は搭載されていません。 しかし、四則演算で簡単に計算できます。

(計算例)
500万円を年利5%の単利で借りる場合、2.5年後の経過利息を求める。
さらに2.5年で返済する場合の合計返済予定額を求める。

キー操作表示説明備考
5000000[×]5[%][=] 250,000.00 1年間の利息
[×]2.5[=] 625,000.00 2.5年分の経過利息
[+]5000000[=] 5,625,000.00 合計返済予定額

この例の場合、2.5年ということで簡単な計算になりました。
1年=360日基準で2年3ヶ月などになると計算はもう少し複雑になりますが、それでも四則演算で十分に求められるでしょう。

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複利計算・償却計算

本機 BA II Plus の説明書は、TVM計算と償却計算を一体として扱っているので、償却計算も行います。
複利計算は TVM Worksheet(Time Value of Money = 貨幣の時間的価値)を使って行います。
償却計算は Amortization Worksheet を使います。

(計算例・複利計算)
3,000万円を年利5%の複利で借りたとする。毎月20万円返済する場合、返済期間は何ヶ月なのか。
また、借金の合計返済額はいくらになるか。

キー操作表示説明備考
[2ND][CLR TVM]   TVM Worksheet の初期化  
5[I/Y] I/Y = 5.00 年利をI/Y変数に設定  
30000000[PV] PV = 30,000,000.00 借りた金額をPV変数に設定  
200000[+|-][PMT] PMT = -200,000.00 毎月の支払額をPMT変数に設定  
[2ND][P/Y] P/Y = 1.00 TVM Worksheet の P/Y メニューに入る  
12[ENTER] P/Y = 12.00 1年に支払う回数をP/Y変数に設定。
同時にC/Y変数も同じ値に設定される。
 
[↓] C/Y = 12.00 C/Y変数の確認  
[2ND][BGN] END TVM Worksheet の BGN メニューに入る。
期末払いになっていることを確認。
 
[2ND][QUIT] 0.00 メニューから通常の計算モードへ戻る  
[CPT][N] N = 235.89 返済に必要な支払い回数(月数)を求める 235.89ヶ月=約19年8ヶ月
Nの実際の値は、N = 235.8890955
[×][RCL][PMT] -200,000.00 1回分(1ヶ月分)の支払い額を呼出す  
[=] -47,177,819.10 借金の合計返済額を求める 235.89 × -200,000.00 = -47,177,819.10

このように N が非整数(235.89)で計算されるので、N と PMT を乗算するだけで借金の合計返済額が求められます。

HP 12c シリーズ の場合、n = 236 と切上げた整数で出力されます。もちろん実際に236回支払うと過払いが発生します。そのため、過払い分を求めて正しい結果を計算する必要があります(詳細はここを参照)。
HP 12c シリーズの場合、nを非整数にすると、端日数期間モード(例えば、n = 12.5 のとき、0.5回の端日数期間が経過してから12回分の期間が始まる)になってしまうので、非整数で結果を出せないのです。

しかし、HP 12c Platinum で求めた結果が -47,177,860.08 ですので、わずかな差異が出ています。
その差は40.98です。約-4718万円という結果からすると非常に小さな数です。

この差が出た原因はよく分かりません。
N の桁数に問題はありません。N = 235.89 と表示されますが、小数点以下の表示桁数を2に設定しているので、表示上そう見えるだけです。
小数点以下の表示桁数を無制限に設定すると、N = 235.8890955 と表示されますので、これが内部の値に近いのです。 BA II Plus の内部精度は13桁ありますので、N の桁数に問題はないのです。
ただし、電卓内部の N の求め方に問題があって N に誤差が生じる可能性はあるかもしれません。真相は不明ですが。

割愛しますが、N = 236.00 として、HP 12c Platinum と同じ方法で計算すると、HP 12c Platinum の計算例と同じ結果になります。

(計算例・償却計算)
上の複利計算において、2年目終了後の残高を求める。
さらに2年目だけの支払合計(-200,000 × 12 = -2,400,000)において、元金分と利子分を求める。
TVM Worksheet の変数は前の計算からそのままにして計算すること(I/Y, PV, PMTが償却計算で使用される)。

キー操作表示説明備考
[2ND][AMORT] P1 = 1.00 Amortization Worksheet のメニュー  
13[ENTER] P1 = 13.00 2年目の始まり=13回目の支払いなので、13をP1変数に設定する。  
[↓] P2 = 1.00 P2変数を表示  
24[ENTER] P2 = 24.00 2年目の終わり=24回目の支払いなので、24をP2変数に設定する。  
[↓] BAL = 28,111,055.97 2年目終了後の残高  
[↓] PRN = -968,029.88 2年目だけの支払合計の元金分  
[↓] INT = -1,431,970.12 2年目だけの支払合計の利子分 PRN + INT = -2,400,000
つまり、2年目だけの支払合計

本機 BA II Plus の償却計算は HP 12c Platinum のそれよりも優れています。
BA II Plus は P1 と P2 で期間を指定するだけでその期間の償却計算ができます。
期間の順序を全く考慮しないで任意に期間を設定して何回でも計算できます。

HP 12c Platinum で同じことをする場合、1年目の償却計算を行ってからでないと、2年目の償却計算ができません。
なぜなら、開始回数が設定できないからです。
さらに償却計算の期間を前に戻したい場合、PVレジスタとnレジスタを手動で元の状態に戻して、計算を支払いの1回目からやり直す必要があります。

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キャッシュフロー計算

説明書(2005年版)P41 によると、不均等なキャッシュフローの計算は Cash Flow Worksheet を使い、均等なキャッシュフローの計算は TVM Worksheet で行うとなっています。

ここでは HP 12c Platinum の割引キャッシュフロー分析の例と同じことをするので、不均等なキャッシュフローの計算ということになります。 よって、 Cash Flow Worksheet を使うことになります。
Cash Flow Worksheet の目的は NPV(正味現在価値)と IRR(内部収益率)を求めることです。

NPV(正味現在価値)の定義は以下の通りです。
C0〜Cn がキャッシュフローです。C0は投資なので、必ず負数になります。
r が投資で確保したい利率(期待収益率=割引率)です。例えば、5%のとき0.05になります。
NPV
この式は将来に得られる予定のキャッシュフローは現在から見て不確実で価値が低いという意味です。そのため、遠い将来のキャッシュフローほど分母の指数が大きくなります。将来のキャッシュフローの価値を割引いているのです。
NPVの値が正のときは利益が得られることになります。

IRR(内部収益率)の定義は NPV = 0 にしたときの r のことです。
IRR
内部収益率 r が大きい方が投資して利益が出る可能性が高くなります。

(注意)
通常、NPV と IRR の定義は上のように説明されます。英語版Wikipedia の NPVIRR の項目でも同様の説明になっています。
しかしながら、BA II Plus の説明書(2005年版)の付録において、NPV と IRR の定義式が異なっています。 なぜなら、BA II Plus は、第nキャッシュフロー量変数(Cnn)を Fnn 回繰り返して使うという機能を持つので、それを考慮した定義式になっているからです(Fnn 変数は第nキャッシュフローの繰返し回数です。初期値は1です)。
説明書の NPV と IRR の定義式の根本的な意味は上の式と一緒です。

(計算例)
5,000万円の不動産を購入して、10%の利回りを確保したいとします。
キャッシュフローの動きは以下のように仮定します。年数1〜4は家賃などの利益です。最後に7,000万円でその不動産を売却します。
このときのNPV(正味現在価値)とIRR(内部収益率)を求めます。

年数キャッシュフロー
0-50,000,000
16,000,000
25,900,000
35,800,000
45,500,000
570,000,000

キー操作表示説明備考
[CF] CF0 = 0.00 Cash Flow Worksheet の CF メニューに入る  
[2ND][CLR WORK] CF0 = 0.00 Cash Flow Worksheet を初期化  
50000000[+|-][ENTER] CF0 = -50,000,000.00 CF0変数を設定 初期投資なので負数
[↓] C01 = 0.00 C01変数を表示  
6000000[ENTER] C01 = 6,000,000.00 C01変数を設定  
[↓] F01 = 1.00 F01変数(C01の繰返し回数)を表示  
[↓] C02 = 0.00 C02変数を表示  
5900000[ENTER] C02 = 5,900,000.00 C02変数を設定  
[↓] F02 = 1.00 F02変数(C02の繰返し回数)を表示  
[↓] C03 = 0.00 C03変数を表示  
5800000[ENTER] C03 = 5,800,000.00 C03変数を設定  
[↓] F03 = 1.00 F03変数(C03の繰返し回数)を表示  
[↓] C04 = 0.00 C04変数を表示  
5500000[ENTER] C04 = 5,500,000.00 C04変数を設定  
[↓] F04 = 1.00 F04変数(C04の繰返し回数)を表示  
[↓] C05 = 0.00 C05変数を表示  
70000000[ENTER] C05 = 70,000,000.00 C05変数を設定  
[↓] F05 = 1.00 F05変数(C05の繰返し回数)を表示  
[NPV] I = 0.00 Cash Flow Worksheet の NPV メニューに入る  
10[ENTER] I = 10.00 I変数を10%に設定  
[↓] NPV = 0.00 NPV変数を表示  
[CPT] NPV = 11,909,270.98 NPVを求める  
[IRR] IRR = 0.00 Cash Flow Worksheet の IRR メニューに入る  
[CPT] IRR = 15.80 IRRを求める。単位は%。  

表が長くなりましたが、対話的な操作が原因で長くなっているだけです。HP 12c Platinum と比べると遥かに簡単な操作です。

NPV(正味現在価値)が約1,191万円ですので、利益が出ることになります。
IRR(内部収益率)は15.8%です。目標の利回り10%を越えていますので、投資して利益が出る可能性があります。

Cash Flow Worksheet の CF メニュー内は[↑][↓]キーで自由に移動できます。 そのおかげで数値の変更も容易です。

HP 12c シリーズでキャッシュフローの値と繰返し回数を変更する場合、手間のかかる操作が必要です。
HP 12c シリーズで不可能なデータ挿入とデータ削除も BA II Plus だと容易にできます(削除されたデータの後ろはちゃんと前詰めされます)。

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関数電卓的機能

関数電卓として最低限の機能はある

関数電卓としての最低限の機能はあります。
三角関数、逆三角関数、双曲線関数、順列、組合せ、べき乗、指数関数、対数関数、階乗があります。
そのため、標準方式入力の関数電卓としても使えます。

しかし、BA II Plus の関数電卓的機能を目的として本機を購入するのはやめるべきでしょう。
本機を買える価格で遥かに高性能な関数電卓が買えます。
あくまでも BA II Plus の関数電卓的機能はオマケとするべきでしょう。

累乗根を求める時はべき乗を使う

本機には累乗根を求める機能がありません。
その代わり、べき乗で累乗根を求めることができます。
例えば、10の3乗根(3√10)を求めたい場合は、101/3として求めることができます。
実際の操作は以下のようになります。

10 [yx] 3 [1/x] [=]

統計機能

Statistics Worksheet が統計機能です。

本機 BA II Plus は統計データを50組(2変数で1組)保存可能です。修正も容易です。
2変数統計(2変数 = XとY)の場合、以下の回帰分析が可能です。

LIN(線形回帰)Y = a + bX
Ln(対数回帰)Y = a + b ln(X)
EXP(指数回帰)Y = a + bX
PWR(べき乗回帰)Y = aXb → ln(Y) = ln(a) + b ln(X)

標本の標準偏差、母集団の標準偏差も計算できます。 確率密度関数は搭載されていないので、最近の関数電卓に比べると見劣りします。

ちなみに HP 12c シリーズは、統計機能が極めて貧弱です。
入力されたデータを記憶していないので、入力ミスしたら修正が困難です。 誤って入力した場合、誤って入力した値を覚えていないと修正できないのです。
標本の標準偏差は計算できますが、母集団の標準偏差を求める時は特殊な操作が必要です。 回帰分析も線形回帰だけです。

このように HP 12c シリーズの統計機能はオマケ程度なので、BA II Plus の統計機能の方が明らかに優れています。
ただし、HP 12c シリーズはデータを記憶しないので、データ数の制限はありません。
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機械的な作りは安っぽい

本機 BA II Plus の操作性と機能は HP 12c Platinum よりも進歩しています。
しかし、HP 12c Platinum よりも価格が安いせいか機械的な作りは安っぽくなっています。

電池フタがない

TI-36X Pro と同様に電池フタがありません。
そのため、電池交換のために分解が必要です。精密ドライバーセットが必要になります。

最初に BA II Plus の背面を外します。
4本のネジを外しただけでは簡単に背面は外れません。前面パネルと背面が爪で固定されているからです。
電卓を全体的に反らせたり、前面パネルを引っ張ったりしているうちに何とか外れました。

基板に直付けされた電池ホルダーに電池が入っています。

電池ホルダーは電池をかなり強く保持しているので、外すのは多少苦労します。
細いマイナスドライバーなどで慎重に外す必要があります。
力を入れすぎると基板を損傷する可能性がありますので、慎重に行う必要があります。

TI-36X Pro よりも電池交換し難いと感じました。
機械が苦手な人だと背面を外す段階で壊してしまう可能性もあります。

ちなみに上位機種の BA II Plus Professional は電池フタを搭載していますので、分解は不要です。

ゴム足がない

ゴム足がありません。そのため、机の表面の状態によっては安定して置けません。

ただし、上位機種の BA II Plus Professional にはゴム足のようなものがあるようです。
IFIXIT によると、BA II Plus Professional の背面に "small sticky soft cushioning material"(小さな粘着性のある柔らかいクッション性のある物体)が貼られていると書かれています。

キーが打ちやすいとはいえない

キーは実用範囲内のものですが、打ちやすいとは言えないものです。

キーの上面に丸みがある上にすべすべしているので、指が滑りやすいのです。
そのため、特に横に細長い小さなキーは押しやすいとは言えなくなっています。
押した感触も良いとは言えません。押すとグラつきを感じます。

HP 12c シリーズのキーと比べると遥かに貧弱です。

液晶の数値が読み難い

液晶の幅が狭いのにアルファベット3文字+等号+負号+数値10桁を表示しようとしているので、数値が読み難くなっています。
さらに液晶の背景の色が緑色のかかった灰色のような色なので、さらに見辛くなっています。
下のように BA II Plus と HP 12c Platinum を比較すると、その差は一目瞭然です(ほぼ同一縮尺)。

BA II Plus 液晶

HP 12c Platinum 液晶
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誤植の多い説明書

意外と誤植が多くて驚きました。
本機 BA II Plus の説明書 "BA II PLUS Guidebook" にバージョン番号は印刷されていないのですが、 著作権表示からするに2005年から更新されていないようです(2018年2月11日現在)。

キャッシュフロー・ダイアグラムの誤植が多い

キャッシュフロー・ダイアグラムとは、キャッシュフローの流れを図示したものです。
横線を時間線(time line)として左から右に時間が流れるようにします。
横線から縦に出ている矢印は金銭の出し入れを表しています。
上矢印は金銭の受取(正数)、下矢印は金銭の支払い(負数)を意味しています。

キャッシュフロー・ダイアグラムは本機の説明書にも多く使われています(本機の説明書のキャッシュフロー・ダイアグラムは時間線の上だけに矢印が描かれている変わったものです)。
しかし、キャッシュフロー・ダイアグラムに誤植が多いのです。矢印の方向がデタラメだったり、ダイアグラム中の文字にも誤植があります。

キャッシュフロー・ダイアグラムは金融計算の考察において重要なものであり、いい加減に描いて良いものではないのです。

操作例の誤植が多い

特に酷いと思ったものを紹介します。

説明書(2005年版)P48に "Example: Value of a Lease with Uneven Payments"(例:不均等な支払いがあるリースの価値)という例があります。
この例に2つの問題が書かれています。

・これらのリースの支払いの現在価値は何ドルなのか?
・均等に何ドルの支払いを月初にすれば、(上と)同じ現在価値になるのか?

しかし、何故か2つ目の操作例が印刷されていません。そのせいなのかP50はほとんど空白になっています。

さらに上位機種 BA II Plus Professional の機能が書かれていて当惑したところがあります。
説明書(2005年版)P56に本機では計算できない修正デュレーション(modified duration)の計算ができるように書かれているのです。
その反面、本来は表示されるはずの経過利息(AI : Accured interest)のことが印刷されていません。

他にも細かい誤植が多々あります。

英語が分かり難いところがある

説明書は比較的やさしい英語で書かれています(誤植のせいで分かり難くなっているが)。
ただし、英語の金融用語が連発されますので、それを調べるのは大変でした。

しかし、分かり難いところもありました。 説明書(2005年版)P9の以下の箇所です。

Universal Power [yx]
Press [yx] to raise the displayed positive number to any power (for example, 2-5 or 21/3).

Note: Because the reciprocal of an even number (such as, 1/2, 1/4, 1/6) is a complex number,
you can only raise a negative number to an integer power or the reciprocal of an odd number.
(直訳)
多用途なべき乗 [yx]
表示されている正数を様々なべき乗(例えば、2-5 または 21/3)にするために [yx]を押すこと。

注意:偶数の逆数(1/2, 1/4, 1/6のようなもの)は複素数なので、負数を整数あるいは奇数の逆数のべき乗にすることだけが可能である。

この文章の "Note:" で始まる文章は良くない英語だと思いました。
偶数の逆数(1/2, 1/4, 1/6のようなもの)は複素数なので、」は意味不明です。誤植と言ってもいいのではないでしょうか。
"Note:"で始まる文章は実際には以下のような意味なのです。

(意訳)
注意:負数の指数を偶数の逆数(1/2, 1/4, 1/6のようなもの)にすると複素数になるので、負数の指数は整数あるいは奇数の逆数だけにしないといけません。

以上に書いたこと以外にも誤植が多くあり、読んでいてかなりストレスが溜まる説明書です。

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総評

本機 BA II Plus は、対抗機種の HP 12c シリーズよりも格段に使いやすい金融電卓です。
ワークシートのメニュー表示をする操作は少し混乱気味ですが、メニュー表示後の操作は対話的になり、HP 12c シリーズよりも格段に使いやすくなるのです。
ただし、対話的と言っても状態インジケーターと3文字のアルファベットによるものですので、略語による表示が多く、それなりに暗記も必要とされます。

その反面、機械的な作りは貧弱に感じました。機械的な作りは HP 12c シリーズより見劣りします。 特に電池フタがないのは不便です。
本機はアメリカ合衆国で約$30で売られており、決して格安商品ではありません(2018年2月11日現在)。
本機よりも遥かに安い日本の関数電卓でも電池フタくらいはあります(日本の関数電卓の電池フタはたいていドライバーが必要だが、電池フタがないよりは格段にマシ)。

本機の上位機種 BA II Plus Professional は電池フタがあるので、その点は改善されています。

説明書(2005年版)に誤植が多いのは意外でした。
今までに調べたことのあるテキサス・インスツルメンツ社の電卓(TI-84 Plus CE, TI-Nspire CX CAS, TI-36X Pro)の英文説明書はそれほど誤植は多くありませんでした。

しかし、本機の説明書は何故か誤植が多いのです。
2005年から更新されていないことを考えると、同社にやる気がないのは明白です(2018年2月11日現在)。
おそらくはネットの解説や市販の解説本に任せてしまっているのかもしれません。

解説サイトの例:"BAII Plus Tutorial"
解説本の例  :"300 Hours BA II Plus CFA Calculator Guide"

※筆者はネットの解説は読みませんでした。ネットの解説は一部機能が書かれてなかったりするので、説明書の方がレビューを書くには都合がいいのです。

機械的な作りや説明書に難点はあるものの HP 12c Platinum よりも格段に使いやすいので、金融電卓としては本機 BA II Plus の方がお勧めです。
ただし、メーカー公式の日本語説明書は存在しないので、英語が読める必要があります。

ちなみに株式会社ナオコで本機を購入すると、非公式な日本語説明書が付属します。 ただし、その非公式な日本語説明書の完成度は不明です。

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