電卓の入力方式の分類は明確に決まっていませんが、このサイトでは以下のように分類します。
主に一般電卓(普通電卓や実務電卓など)で使われている単純な入力方式です。数値を入れてから演算子キー(+, -, ×, ÷)あるいはコマンドキー(=, CL, M+ など)を押します。当然、代数式は扱えません。
関数電卓にもこの方式を使うものがあります。
標準方式の関数電卓の一部には、= キーを押されるまで計算を始めないものもあります。そのような機種の場合、乗算と除算を優先して計算できます。
一見すると標準方式に似ていますが、[=]ボタンがありません。
その代わり、[+=]と[-=]ボタンを搭載しています(機種によって、異なることがあります)。
[+=]は「入力前に表示されていた数 + 入力した数 =」を意味しています。つまり、数値を入れてから足すか引くかを決定できます。[+=]ボタンのおかげで加算を繰り返す用途には効率が良いと言われています。
[×] あるいは[÷]を押した後に[+=]を押すと、標準方式の[=]と同じ意味になります([-=]を押すと最後の数値が負数になって乗算・除算される)。
標準方式と違って演算子を入力しても計算が始まりません。そのため、一度に代数式を入力できます。
例えば、上の写真のように「2X
2
+3X+4 を1から5まで積分する。シンプソン法の分割数は 2
6
である。」という代数式を一度に入力できます。
分数や積分の記号も一行で表示するために電卓特有の表記を使います。そのため、ライン表示方式と呼ばれているようです。
関数電卓とグラフ電卓とポケットコンピューターで使われます。
メーカーによって呼び方は異なります。
CASIO :「ライン表示」(fx-375ES説明書より)
SHARP :「LINEエディター」(EL-5160J説明書より)
Canon :「ラインビュー」(F-789SG説明書より)
メーカーが 「数式通り入力」 と言う場合もありますが、後述の教科書表示(自然表示)が珍しくない2017年現在では誤解を招く言い方とも言えます。
英語で "Textbook display" と呼ばれるので、私は直訳で「教科書表示」と言うことにしています。名前の通り代数式を数学の教科書のように自然に表示・入力できます。関数電卓とグラフ電卓で使われます。
メーカーによって呼び方は異なります。
CASIO :「数学自然表示」または「自然表示」(fx-375ES説明書より)
SHARP :「W-VIEWエディター」(EL-5160J説明書より)
Canon :「教科書ビュー」(F-789SG説明書より)
4段スタックを使って、逆ポーランド記法 ( RPN : Reverse Polish Notation ) に従って入力を行う方式です。例えば、通常の数式で (1+2)×(3-4) と入力するところを
1 [ENTER] 2 + 3 [ENTER] 4 - ×
と入力します。
括弧が不要で複雑な数式を計算できる特徴を持ちますが、操作するにはRPNの理解と慣れが必要です。代数式は扱えません。
現在、この入力方式の電卓を作っているのはHP Inc.社(2015年11月にヒューレット・パッカード社が分割されてできた会社)とSwiss Micros社だけです。
詳細は「
RPN と 4 Level RPN 電卓
」を参照して下さい。
RPL言語(4 Level RPNを大幅に拡張させて言語にまで発展させた)に従って代数式などを入力します。スタックの段数は無制限。入力方式は多様で無制限段数RPN方式、ライン表示方式そして教科書表示方式(Equation Writer)までもが可能です。電卓のホーム画面から代数式だけでなく、文字列、プログラムなども入力可能であり、電卓の入力というよりはRPL言語と対話しているような感じです。操作は極めて煩雑です。
この方式の電卓は
HP 50g
(2015年製造終了)を最後に作られていません。しかし、グラフ電卓
HP Prime
がRPL言語方式の簡易版のような方式を制約付で採用しています。
詳細は「
RPL言語(4 Level RPNが大幅に進化)
」を参照して下さい。