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CASIO fx-JP900

fx-JP900 正面写真 メーカーCASIO
型名fx-JP900
種別関数電卓
発売開始2015年2月
製造終了 -
寸法奥行 165.5mm × 幅 77mm × 厚さ 11.1mm(ボタンを入れると約13mm)
ハードケース背面装着時 : 奥行 約168mm × 幅 約81.5mm × 厚さ 約16mm(実測値)
重量94g(電池含む。メーカーによると90g)、130g(ハードケース装着時)
いずれも実測値
入力方式教科書表示方式、ライン表示方式
画面白黒液晶 192 × 63 画素+状態インジケーター20個(20個全てが使われていないかもしれない)
CPU不明
RAM不明
ROM/Flash不明
電源LR44 × 1 +太陽電池
プログラミング言語なし
公式ページfx-JP900 | スタンダード関数電卓 | 関数電卓 | 電卓 | CASIO
説明書URLfx-JP700/JP900 取扱説明書ダウンロード
著者の購入年2016年2月
著者の購入価格(購入店)4,190円(税込)(ビックカメラ有楽町店)ポイント10%還元あり
【付録】テストモード(診断モード)の解説

概要

CASIOが半導体から完全に新規設計した関数電卓シリーズ fx-JP500/700/900 の最上位機種です。その圧倒的な高性能は従来の関数電卓を全て時代遅れにしてしまいました(グラフ電卓除く)。通常の関数電卓にも関わらず、高解像度液晶を搭載し、高速な計算が可能です。関数電卓が新時代に入ったことを我々に告げているような気がします。

開発の経緯は週刊アスキー「異様に欲しくなった電卓の話 カシオCLASSWIZ」に書かれています。

レビュー

本機 fx-JP900 は私を電卓マニアにした張本人の機種です。本機に出会うまでは CASIO fx-4800PSHARP EL-5120 を使っていたのですが、どちらも満足できなくて「所詮、関数電卓なんてこんなものだろう。昔使っていたポケットコンピューター SHARP PC-1250 の方が良かった」という考えでした。そのため、関数電卓に関心がなかったので、fx-4800Pを約20年、EL-5120を約12年も使い続けることになりました。しかし、本機 fx-JP900 を購入してから考えが変わりました。プログラミング機能はないものの画面表示の美しさと親切さ、教科書表示入力の操作性の良さ、そして機能の多さが自分の抱いていた関数電卓の印象を遥かに越えたものだったからです。

本機の最大の特徴は親切な画面表示です。従来の関数電卓は英語の短縮表記でメニューを表示していましたが、本機 fx-JP900 では高解像度液晶を活用して日本語で表示してくれます。英語も短縮しない綴りで表示できるようになったので、英語でも分かりやすくなりました。そのため、説明書を見る回数が大幅に減ったのです(と言っても説明書が不要になったわけではなく必要ではある)。

さらに関数電卓としては圧倒的な計算速度を誇ります。
以下のベンチマークの結果を参照して下さい。関数電卓の中では最高の計算速度を誇ります。

関数電卓 SwissMicros DM42 については比較対象から除外します。
DM42 は、価格が2.5万円程度しますので、他の関数電卓と比較するのはあまり意味がないでしょう。
DM42 は、グラフ電卓並みのハードウェア(ARM 24/80MHz)上で HP-42S のエミュレーターを実行しているので、一般的な関数電卓とは性能が別次元です。

「電卓ベンチマーク01(三角関数を含んだ式の総和)」において、全条件で関数電卓中の最高性能です。
しかもグラフ電卓 TI-89 Titanium(MC68000 16MHz)に迫る性能です。

「電卓ベンチマーク02(三角関数を含んだ式の積分)」においても全条件で関数電卓中の最高性能です。
しかも b = 103 まではグラフ電卓 TI-89 Titanium(2004年)より高速です。ただし、b = 104 だと fx-JP900 はエラーになってしまいますが、TI-89 Titanium は b = 104 でも計算を完了してくれます。
さらに b = 102 までは グラフ電卓 HP 50g(2006年)(ARM 75MHz + Saturn CPU エミュレータ) よりも高速です。

もっとも TI-89 Titanium と HP 50g は出力桁数が12桁(fx-JP900は10桁)ある上にCAS(数式処理システム)があるので、速度的には不利です。しかも HP 50g の OS は Saturn CPU エミュレータ上で動作していますので、ARMの本来の性能は出せていません。そのことを考慮する必要があるでしょう。

本機 fx-JP900 は条件次第では古いグラフ電卓よりも高速になるときがあります。と言っても fx-JP900 はグラフ電卓 CASIO fx-9860GII(2009年)より圧倒的に遅いのです。より新しいグラフ電卓 TI-Nspire CX CAS(2011年)、HP Prime(2013年)に対しては比較する意味がないくらいの性能差があります。

現時点(2017年9月)では fx-JP900 に対抗できるのはグラフ電卓だけという感じですが、fx-JP900 にも欠点はあります。本体に印刷された文字が非常に読み難いのです(下の画像をクリックして拡大してみましょう)。

浮き彫りのような模様

このように本体の表面に浮き彫りのような模様が刻まれており、光が乱反射するのです。印刷された文字の発色も良いとは言えません。この見難さは照明によって変わるのですが、平面光源に近い照明ほど見やすくなるようです。しかし、照明を選ばないといけない電卓なんておかしいのではないでしょうか。そもそもこの模様は何のためにあるのでしょうか?

さらに fx-JP900 は使えない機能があります。私が無駄に思った機能は以下のものです。

  1. エンジニアリング記号:k(103), M(106), G(109)などの10の累乗倍を示す記号を使える。
  2. QRコード機能:計算結果をQRコードに変換して、スマホで読み取らせるとWebブラウザで数式、グラフ表示ができる。
  3. 表計算機能:簡易なEXCELのようなことができる。表に関数を入れることができる。
エンジニアリング記号はメニューから記号を入れないといけないので、操作の手間を考えるとあまり使えない機能です。
QRコード機能は fx-JP900 にQRコードを表示させてからスマホ専用ソフト「CASIO EDU+」で読み取らせて、スマホ上のWebブラウザで数式、グラフを表示するという機能ですが、手間がかかりすぎます。しかもグラフの描画範囲の調整ができないので、実用性に疑問があります。
最大の無意味な機能は表計算機能につきます。表計算モードを別モードへ切替すると表の内容が全部消えてしまいます。そもそも外部データ出力機能のない本機に表計算させて何の意味があるのですか?

ただし、上述の機能は使わなければそれほど害はないと思います。
私が機能的に問題だと思ったのは電源OFFで計算履歴が完全に消えてしまうことです。これは他のCASIOの関数電卓や Canon F-789SG も同様ですが、資格試験対応のために計算履歴を削除しているようです。さらにモード切替をするとたいていのことは忘れてしまいます。忘れないのは変数程度です。
ちなみに SHARP EL-5160J-X は電源OFFでも計算履歴を残してくれます(モード切替すると消えてしまうが)。関数電卓 TI-36X Pro も計算履歴を残してくれます。グラフ電卓の場合、計算履歴の維持は当然です。

このように欠点もあるのですが、親切な表示とその性能は素晴らしく、私が電卓マニアになるきっかけを与えてくれた機種でした。

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