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CASIO fx-9860GII

CASIO fx-9860GII 正面写真 メーカー CASIO
型名 fx-9860GII
種別 グラフ電卓(CASなし)
発売開始 2009年
製造終了 2017年5月頃に日本で製造終了と発表された。
しかし、 CASIO USAのページ によると、2020年4月18日でも販売が続いている。
寸法 奥行184mm × 幅91.5mm × 厚さ21.2mm(メーカー公表値。ゴム足の厚みが入っていない?)
奥行184.4mm × 幅91.5mm × 厚さ22.5mm(実測値)
奥行186.4mm × 幅91.5mm × 厚さ25mm(スライドケース背面装着時の実測値)
重量 220g(付属電池込みの公表値)※実測とほぼ一致
約260g(付属電池、スライドケース込みの実測値)
入力方式 ライン表示入出力、自然入出力方式(教科書表示入出力方式)
画面 フルドットマトリックス 128×64画素( CASIO USA より)
※日本のCASIOのWebサイトに何故か192×63画素と書かれているが、明らかな誤り(2017年8月2日現在)
CPU SH-4A (29.49MHz) (参考) Ftune/Ftune2/Ptune2 FX/Prizm tuning utility
RAM 512KB(ハードウェア取扱説明書に書かれている「プログラム容量:最大62,000バイト」は、512KBの中の62,000バイトだけをプログラムに使えるという意味である。)
ROM/Flash 2MB(ユーザー利用可能領域は1.5MB)
電源 単4形アルカリ乾電池 × 4本
プログラミング言語 CASIO独特の言語。構造化されておらず、特殊な記号を使う。
一部の人が"CASIO BASIC"と称しているが、説明書に"CASIO BASIC"とは一切書かれていない。
公式ページ (日本語) fx-9860GII | グラフ関数電卓 | 関数電卓 | 電卓 | CASIO
(英語) FX-9860GII - Graphing | Casio USA
説明書URL (日本語) fx-9860GII 取扱説明書ダウンロード
(英語) fx-9860G II / fx-9860G II SD Manual
著者の購入年 2017年5月
著者の購入価格(購入店) $77.12(Amazon USA)※送料、税関費用などは別

概要

本機 fx-9860GII(2009年発売) は fx-9860G(2005年発売)の後継機種です。安い割に高性能です。 アメリカ合衆国のグラフ電卓の中で最大シェアを誇る 初代 TI-84 Plus (2004年発売)への対抗機種でもあります。

アメリカ合衆国だと希望小売価格 $79.99 と安く(実売価格はもっと安い)、ライバルの元祖 TI-84 Plus よりも安いにも関わらず、性能は TI-84 Plus を圧倒しています。 さらに TI-84 Plus シリーズの最新機種 TI-84 Plus CE の計算速度すら軽く超えています。 価格性能比を考慮するとお買い得なグラフ電卓と言えます。

ただし、日本では2万円近いボッタクリ価格で販売されてきました。 日本では2017年5月頃に製造中止ということになっていますが、アメリカ合衆国では2017年8月現在でも売られています。

2020年3月にヨーロッパで後継機種の CASIO fx-9860GIII が発売されました。
詳細は「 後継機種 fx-9860GIII 」を参照して下さい。

目次

  1. レビュー
    1. 安くて高速なハードウェア
    2. CASはないが豊富な機能
    3. ファンクションメニューを中心にした煩雑な操作性
    4. ファンクションメニュー以外の操作性の問題
    5. 奇妙なプログラミング言語
    6. 古さを感じるPC接続ソフト FA-124
    7. 不親切な説明書
    8. 総評
    9. 後継機種 fx-9860GIII

レビュー

本レビューは OS 2.09 に基いています。

安くて高速なハードウェア

本機の特徴は安くて高速なハードウェアです。 以下のベンチマークを見てもその演算性能が分かると思います。

電卓ベンチマーク01(三角関数を含んだ式の総和)
電卓ベンチマーク02(三角関数を含んだ式の積分)

これらのベンチマークによりますと fx-9860GII は TI-84 Plus シリーズの最新機種 TI-84 Plus CE(2015年発売)の約2倍の計算速度です。 本機 fx-9860GII よりも高価な HP 50g と TI-89 Titanium ですら計算速度は本機よりも遅いのです(ただし、HP 50gとTI-89 TitaniumはCAS搭載なので速度的に不利)

このように比較的高性能な fx-9860GII ですが、価格もまた安いのです。 2017年7月31日現在の主なグラフ電卓の実売価格は以下のようになっています。

下表は Amazon USA School Savers の価格が混ざっていますが、Amazon USA が新品を入荷していない機種は School Savers の価格を使っています。

機種名 実売価格 販売店
fx-9750GII $45.64 Amazon USA
fx-9860GII $68.55 Amazon USA
fx-CG10 $96.31 Amazon USA
TI-84 Plus $104.95 School Savers
TI-84 Plus CE $122.75 School Savers
HP Prime $126.90 Amazon USA
TI-Nspire CX CAS $140.61 Amazon USA

上を見ても分かるように教育用グラフ電卓で独占状態にある TI-84 Plus シリーズと比べるとかなり安いのです。 TI-84 Plus シリーズは市場独占状態にあるので性能の割には高価格で販売されています。 そのため、fx-9860GII は TI-84 Plus シリーズの市場を切り崩すために戦略的に価格を安くしているのでしょう。

TI-84 Plus は上述のベンチマークに登場しないのですが、CPUが Z80 15MHz であることを考えるとかなりの低速度でしょう。 CPU eZ80 48MHz を搭載したTI-84 Plus CE ですら fx-9860GII より低速度なのですから。 しかも TI-84 Plus の表示装置は白黒液晶96×64画素しかありません。

一方、TI-84 Plus CE は高解像度カラー液晶(320×240画素 16bitカラー)と内蔵式充電池を搭載しているので、見た目的にはそれほど割高に感じませんが、計算速度は fx-9860GII の半分程度しかありません(上述のベンチマークより)。

本機 fx-9860GII は安くて高性能なのが特徴ですが、それ以外にも特徴があります。 fx-9860GII は白黒液晶なのにバックライトを搭載しているのです。白黒液晶のグラフ電卓としては珍しいのではないのでしょうか。

バックライト点灯中

このように fx-9860GII はかなりお買い得な機種なのですが、日本では2万円近いボッタクリ価格で売られてきたため普及していません。

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CASはないが豊富な機能

本機には CAS(数式処理システム)がありませんので、未知変数を持つ代数式の変形などはできませんが、豊富な機能を有しています。 [MENU]ボタンを押すと、fx-9860GIIのメインメニューが表示されます。

メインメニュー 1/2

メインメニュー 2/2

メインメニューに表示される機能は以下の通りです。

RUN・MAT 通常の計算モード(行列・ベクトル計算も可能)
STAT 統計計算
e・Act 電子教材(教材にアプリケーションのデータを埋込可能。メモのような使い方も可能)
S・SHT 表計算
GRAPH グラフ描画
DYNA アニメーションするグラフの描画
TABLE 関数から数表を作成する
RECUR 漸化式計算
CONICS 円錐曲線
EQUA 方程式計算
PRGM プログラミング機能
TVM 財務計算
E-CON3 データアナライザーEA-200あるいはCMA CLABを使用して理科の実験を行う
LINK 他の電卓あるいはPCと接続する(他の電卓と接続するケーブルは別売)
MEMORY メインメモリー(RAM)と保存メモリー(フラッシュメモリ)の管理
SYSTEM 各種システム設定
GEOM 図形を描画する(アドインソフト。インストール/アンインストール可能)

メニューに表示される各項目は説明書においてモードあるいはアプリケーションと呼ばれます。 このように低価格なグラフ電卓とは思えない豊富な機能を有しています。

(注意)
GEOM(Geometry)がインストールされていないときは、PC接続ソフト FA-124 を使ってGEOMをインストールできます。
ダウンロードはここからできます(2017年8月26日現在)。
Download Resources - CASIO WEW Worldwide Education Website
上のページからは GEOM 以外のモード(Add-in Software)もダウンロードできます。
・PHYSIUM (Physium) : 化学の周期表と物理化学定数一覧
・PROB (Probability Simulation) : 確率シミュレーション

それらのモード(アドインソフト)は日本の CASIO からもダウンロードできます。
ソフトウェアダウンロード | 電卓・関数電卓 | お客様サポート | CASIO
fx-9860GIIアドイン 取扱説明書ダウンロード
ただし、CASIO WEW よりも古いものが置かれていることがあるようです。
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ファンクションメニューを中心にした煩雑な操作性

操作性は古いと言わざるを得ません。 画面の最下部に表示される6つのファンクションメニューが操作のほとんどを占めています。

ファンクションメニューの一例

同一階層に7つ以上の項目がある時は上の画像のようにファンクションメニューの最も右の項目が▷になります。この▷に対応するボタン(F6)を押すと、同一階層の別の項目が見れます。

このファンクションメニューは階層化されています。 しかし、階層が深く、自分が階層のどの位置にいるのかを表示してくれません。 しかも各項目毎に4文字しか表示できませんので、項目の意味を暗記しないといけない部分もあります。

ファンクションメニューは主に4種類あります。
(下記の4種類以外のファンクションメニューは補助的な機能を呼び出した時に表示されます)

  1. 各モード固有のファンクションメニュー
  2. オプションメニュー([OPTN]ボタンを押下)
  3. 変数データメニュー([VARS]ボタン押下)
  4. プログラムメニュー([Shift]+[VARS]押下)

これらのファンクションメニューはそれぞれ別々の階層構造を構成しているので、非常に繁雑です。
さらに1と2に関してはモード毎に階層構造が変わります。

このファンクションメニューを使って記号を入れないといけないことも多く、一般の関数電卓よりも数式入力に手間がかかります。

このように操作性をファンクションメニューに大きく依存したところは HP 50g と同様です。 しかし、本機 fx-9860GII はメインメニューがあるので、メインメニューのない機種(HP 50g, TI-84 Plus CEなど)よりは操作性はマシとも言えます。 メインメニューのない HP 50g と TI-84 Plus CE はキーに大量の機能呼出を割当てており、キーと機能の対応関係を覚える必要があります。 一方、本機 fx-9860GII はメインメニューのおかげでキーの機能割当ては少なくなっており、メインメニューから必要な機能を探すだけで必要な機能を使えます。

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ファンクションメニュー以外の操作性の問題

ファンクションメニュー以外にも操作性に問題があります。

画面に角度単位が常に表示されない

RUN・MATモード(通常計算モード)の画面を見てみましょう。入出力モードに関係なく角度単位が表示されていません。

ライン入出力モード
自然入出力モード
ライン入出力モード 自然入出力モード

セットアップ画面([Shift]+[MENU])を表示しないと角度単位が確認できないのです。

設定画面で角度単位を表示

安さが原因で液晶画面に角度単位を表示する状態インジケーターを搭載できなかったのでしょう。

カタログでコマンドの書式を調べることができない

カタログの一例

カタログ(全コマンドを一覧表示する機能)にコマンドの書式を表示する機能がありません。 そのため、コマンドの書式は説明書を見るか暗記するしかありません。

自然入出力モードに制約が多い

自然入出力モード(教科書表示入出力)の場合、ライン入出力モードと比べて機能に制約があります。
自分が気がついた範囲では以下の制約があります(他にもあるかもしれません)。

1. 文字単位で選択してコピー&ペーストができない(1行単位しかできない)
2. 上書きモードが使えない。
3. 微積分計算の許容誤差範囲の入力ができない。
4. Σ計算のnの増分を変更できない(1固定になる)
5. RUN・MATモード(通常の計算モード)でプログラムメニューの表示ができない。カタログからプログラム系コマンドも入力できない。
6. 複数の変数メモリー(A~Z)に同じ値を記憶させる時に使う'~'記号の入力が面倒になる。
7. 文字列メモリーが使えない。
8. ファンクションメモリー(数式記憶)が使えない。 ※説明書に何故か明記されていない。
9. 一部のコマンド(検定コマンド。他にもあるかもしれない)が入力できない。 ※説明書に何故か明記されていない。

6については少し説明が必要でしょう。 変数メモリーA,B,C,D,Eに一度に数値10を入れたいとき、" 10→A〜E "と入力すると、1つのコマンドで実行できます。 ライン入出力モードのとき、〜 記号はファンクションメニューから簡単に入力できるのですが、自然入出力モードのときはカタログ(コマンドの一覧表)から入力する必要があるため手間がかかります。

以上のように自然入出力モードにいくつかの制約があり、前機種 fx-9860G が自然入出力モードを初期設定にしなかったのも理解できる気がします。 本機 fx-9860GII の自然入出力モードはライン入出力モードの補助的な存在に感じます。

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奇妙なプログラミング言語

構造化されていないCASIO独自のプログラミング言語を使います。 このプログラミング言語には名前すらありません(一部の人が使っている"CASIO BASIC"という名称は非公式と思われます。後述します)。

下の画像は説明書に書かれている8面体の面積と体積を計算するプログラム(OCTA)です。

fx-9860GII のプログラミング言語の一例(OCTA)

計算に使う変数は変数メモリー(A~Z,r,θ)という名前が一文字のものを使います。 可変長の変数名は使えません。構造化されていないので、ローカル変数もありません。ここは古さを感じます。

?は入力コマンドです。入力コマンドを実行するとユーザーに数値・文字を入力してもらうことができます。ここでは8面体の一辺の長さをユーザーに入力させて、変数メモリーAに代入します。

※余談ですが、 fx-4800P は入力コマンドがなかったので非常に不便でした。fx-4800Pの場合、値を設定していない変数があるとプログラム実行時の最初に自動的にユーザーに値の入力をさせるという仕様なので、任意のタイミングで入力操作をさせることができないという酷い仕様でした。

:はコマンドの区切り記号です。同一の行に2つ以上のコマンドを書く時に使用します。
その次に面積を求める数式 2×√3×A² がそのまま書かれています。

その数式の右にある◢は「出力コマンド」という珍妙なものです。 出力コマンドを実行すると、その直前の計算結果が表示され、"- Disp -"という表示が出た状態でユーザーが[EXE]ボタンを押すまで待機します。 fx-4800P(1996年発売)にも同じコマンドがありました。このことからfx-9860GIIのプログラミング言語が古いプログラミング関数電卓の言語を発展させたものだと言うことが分かります。 「BASIC言語によくあるPRINT命令に相当するものはないのか?」と思われるかもしれませんが、ありません。 そのため、計算結果を表示する度にユーザーは[EXE]ボタンを押す必要があります。

それを防ぎたい場合はLOCATE表示コマンドを使って回避できなくはないのですが、LOCATEコマンドの場合、指定位置に結果を表示しますので、画面レイアウトを考慮したプログラムを書くことになります。LOCATEコマンドはスクロールを自動的にしてくれません。LOCATEコマンドでスクロールをするならば、もちろん手間がかかります。 つまり、WindowsやUNIXのコンソール画面のように単純に計算結果を上から下へ表示するプログラムを書くのは困難なのです。

そして、最後に体積を求める計算式 √2÷3×A^3 がそのまま記述されています。最後の ↵ はただの改行です。 この式の後ろには◢がありません。 プログラムの最後に計算された結果は◢がなくても表示される仕様になっているからです。

それではこのプログラムを実行してみましょう。

プログラム OCTA 実行 1/3
プログラム OCTA 実行 2/3
プログラム OCTA 実行 3/3

"- Disp -"で待機するところがやはり余計です。かなり制約の多い言語です。

このプログラミング言語のことを "CASIO BASIC" と呼んでいる人がいますが、私にはBASIC言語の一種には見えません。見た目が違いすぎます。 CASIO自身もこのプログラミング言語を"CASIO BASIC"と呼んでいません。説明書にも"CASIO BASIC"と書かれていません。 "CASIO BASIC"という言葉は第三者が勝手に命名したものと思われます。 英語版 Wikipedia に "Casio BASIC" の項目がありますが、その名前の由来を証明する出典がありません。

ここでは触れませんが、条件分岐命令(If~Then~Else~IfEndなど)やループ命令(For~To~Step~Next)もあります。 そういう命令も含めるとBASIC言語に似た面はありますが、他の言語にも似たような命令はあります。 fx-9860GIIのプログラミング言語をBASIC言語の一種というには無理がないでしょうか。 PRINT命令に相当するものすらないものをBASIC言語と言えるのでしょうか?

BASIC言語を知らない人のために SHARP EL-5120 (1993年発売)で同じことをするプログラムを書いてみました。 ただし、fx-9860GIIと違って結果を表示する度に何らかのボタンを押す必要はありません。 動作は実機で確認しています。

SHARP EL-5120で8面体の面積と体積を計算するプログラム

INPUT A
S=2*√3*A²
V=(√2/3)*A^3
PRINT S
PRINT V

SHARP EL-5120のプログラミング言語こそBASIC言語というべきでしょう。 言語の知識がなくても何をしているのか何となく分かるのがBASIC言語なのです。

本機 fx-9860GII のプログラミング言語はBASIC言語と言えるのでしょうか?言えないと思います。

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古さを感じるPC接続ソフト FA-124

ここでは FA-124 Ver.2.04 について扱います。 FA-124はWindows専用のPC接続ソフトです。
Windows Vista 以降で動作しますが、 Vista 64bit では動作しません 。 Windows 7以降は32bit/64bit両対応です。

グラフ関数電卓:プログラムリンク ソフトウェア FA-124
http://support.casio.jp/download.php?cid=004&pid=502

かなり古さを感じるソフトウェアです。 未だにUSBだけでなくシリアルポートを選択することができます。 シリアルポートに対応していた頃の名残なのか接続も自動ではなく、手動操作が必要です。

手動操作の手順もやりたいことによって異なります。

(1) fxー9860GIIのデータをPCで参照したいとき
1. PC上で FA-124 を起動しておく。
2. 付属のUSBケーブルでPCと電卓を接続する。このとき電卓の電源はOFFでも接続時にONになる。
3. 電卓の画面に"Select Connection Mode"と表示されるので、"DataTrans:[F1]"を選択する。
4. FA-124のCalculatorウィンドウにあるConnectボタンを押す。
5. 操作を終了したらFA-124のDisconnectボタンを押して切断する。

(2) fx-9860GIIの画面をキャプチャしたいとき
1. PC上で FA-124 を起動しておく。
2. 付属のUSBケーブルでPCと電卓を接続する。このとき電卓の電源はOFFでも接続時にONになる。
3. 電卓の画面に"Select Connection Mode"と表示されるので、"ScreenCapt:[F2]"を選択する。
4. 電卓の画面に"Configure ScreenCapture settings."と表示されるので、[EXIT]を押してその表示を消す。
5. FA-124 の Calculatorウィンドウにある Screen Capture ボタンを押して、FA-124 を画像キャプチャ待機状態にする。
6. 電卓の操作をしてキャプチャしたい画面を表示する。そして、電卓で[Shift]+[7]を押すと電卓の画面がPCに転送される。
7. 電卓の画面を1枚キャプチャする毎に5と6を繰り返す。
8. 切断操作は不要です。

以上のように手動操作がかなり煩雑です。

ここでPCからfx-9860GIIのデータを参照している画面を見てみましょう(つまり上述の(1)で接続したとき)。

FA-124 で fx-9860GII のデータを参照

左にあるCalculatorウィンドウが接続中の電卓(User1)を表現しています。 右にあるFA-124ウィンドウはPC側に保存されたデータを表現しています。

FA-124ウィンドウに表示されている"Default"、"fx-9750GII_〜"、"fx-9860GII_〜"と表示されているものが「イメージ」と呼ばれるPC上のデータです。 FA-124はデータをイメージ単位で管理します。

イメージは2種類あります。メインメモリー(RAM)のイメージと保存メモリー(フラッシュメモリ)のイメージです。 表示するイメージの切替は下図のボタンで行います。

FA-124 の Main/Storage ボタン

Mainボタンを押したときは、メインメモリー(RAM)のイメージだけ表示されます。 Storageボタンを押したときは、保存メモリー(フラッシュメモリ)のイメージだけ表示されます。 そのため、電卓上の両方のデータをPC上の両方のイメージへ転送しないと完全なバックアップにならないのです。 ここが FA-124 の厄介なところです。

Calculatorウィンドウに表示されているUser1アイコンをFA-124ウィンドウのどれか1つのイメージにドラッグ&ドロップすると電卓のデータを全コピーできます(ただし、メインメモリーあるいは保存メモリーのどちらか)。 電卓のデータの部分コピーも可能ですが、そのときも転送先はどれか1つのイメージになります。 FA-124 はイメージ単位でデータを管理しているので、イメージしか転送先がないのです。 イメージはいくつでも作成可能ですので、目的別にイメージを作成することができます。

PC上でプログラムを編集するには、電卓からプログラムのデータをイメージへ転送する必要があります。 イメージに転送したプログラムをダブルクリックすると編集可能になります。

FA-124 でプログラミング

説明が長くなりましたが、FA-124 は実際に操作しないと分からないようなクセのあるソフトウェアです。 全体的に直感性のない操作方法であり、あまり使いやすいとは言えません。

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不親切な説明書

今回使用した説明書は以下の2つです(説明書のリンク先はこのページの最上部の表にあります)。

1組の説明書が複数の機種に対応しているので、非常に長い名前になっています。 このことは、これらの機種の電子回路が大差ないものであり、ソフトウェアで機能を切替えていることを示しています。

これらのハードウェアの違いは、筐体の形状、キーボードの形状と質、バックライトの有無、液晶の大きさと画質、メモリの大きさ、USBポートの有無、SDカードスロットの有無が異なっているだけです。

説明書はライン入出力を前提に書かれています。 1組の説明書で複数機種を扱っているために自然入出力モードがない機種(fx-7400GIIとfx-9750GII)に配慮する必要があったためと思われます。 この説明書において、自然入出力モードはオマケのような扱いです。

とはいえ、そのことはそれほど重大な問題ではないと思われます。 本機の説明書で最も問題なことは説明が不親切なことです。 全体的に図をできるだけ少なくし、文章をできるだけ短くしようとしており、説明が不十分に感じるところが多いのです。

特に気になったのは機能の説明をするときにいきなりキー入力の手順だけを表示している箇所が多いことです。 通常は「画面上にこのようなコマンドを入力するから、キーをこのように入力すれば、このような結果が出ます」と説明するべきです。 ところがこの説明書ではキー入力の手順を表示しているだけで画面上にどのような表示が出るのか記載していないことがあるのです。 その場合、実際に電卓で操作を行わないと理解するのは困難です。 手元に電卓があることを前提にした説明書と言えるでしょう。

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総評

安い割には高速・多機能というのが本機の特徴でしょう。 ただし、アメリカ合衆国で購入した時の話であって、日本で買うとボッタクリ価格で買わされて大損する可能性があります。 日本国内で並行輸入品を売っている業者から買う時は本品の希望小売価格が $79.99 であることを念頭に購入を検討しましょう。

安い反面、操作性や液晶画面の解像度に価格の限界を感じます。 液晶画面の解像度が128×64画素しかないので、あまり強力なユーザーインターフェースにすることはできなかったのでしょう。 操作性はある程度妥協する必要があります。

PC接続ソフト FA-124 はかなり古さを感じます。 接続は自動化されておらず、操作性は非直感的です。 あまり便利なものではありません。

ところで、日本人が fx-9860GII を買う必要は今更ないと思います(コレクターは別)。 本機はアメリカ合衆国における教育用グラフ電卓の安い機種として存在しているだけなのです。 本機は TI-84 Plus シリーズの対抗機種として残っているだけなのです。

TI-84 Plus シリーズがアメリカでどれだけ重要なものなのかは以下の記事を読んで下さい。

翻訳:アメリカのグラフ電卓事情(テキサス・インスツルメンツ社の独占)

2017年の前半、CASIO はCASなしグラフ電卓の最新機種 fx-CG50 を発売しました。 今では fx-9860GII の上位機種 fx-CG10/20 (2011年発売)ですら旧型になってしまったのです。 この状況で日本人が本機を購入する必要性はもはやないと言えます。 日本において、fx-9860GII のような安価な教育用グラフ電卓はあまり必要とされていないと思われます。 だからこそ CASIO も日本で fx-9860GII を生産終了ということにしたのでしょう。

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後継機種 fx-9860GIII

2020年3月にヨーロッパで後継機種の CASIO fx-9860GIII が発売されました。 fx-9860GIII は、フランス限定で発売されていた GRAPH 35+E II という機種が元になっているようです。

本来、fx-9860GII の後継機種は、 fx-CG10/20 fx-CG50 のはずです。 おそらくは fx-CG50 の価格が高いため、マーケティング的に廉価機種が必要となり、fx-9860Gシリーズを復活させたのではないかと思われます。

fx-9860GIIとの違いは以下のようになっています。

画面のバックライトがなくなったのは残念ですが、おおよそ改善した機種と言えるでしょう。

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